Friends of Sunspel:
Charlie Casely-Hayford

2022年4月20日

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ケイスリー ヘイフォードとのコラボレーションによる
新しくモダンなテーラリングカプセルコレクションの発売にあたり、
デザイナー兼共同創設者のチャーリーに、
アート、アンチ・エスタブリッシュメント、
そして従来のテーラリングからの大きな変化について、話を聞きました。

あなたは22歳のとき、父親(故ジョー・ケースリー・ヘイフォードOBE)と共にファッションブランドを立ち上げました。もともとこの業界で働きたいと思っていたのですか?

私はファッション一家に育ち、歩けるようになる前からファッションショーに連れていかれていましたが、実は私の路はアートの世界にもっと導かれていました。ロンドンのコートールド美術研究所で古典美術史を学び、インターンシップはすべて美術系でした。最終学年のとき、父がパリでショーを行っていて、そのバックステージで父と話をしたことがきっかけで、一緒に仕事をすることになりました。母がビジネス面を担当し、父と私は一緒にデザインを担当しました。私が何かクリエイティブなことをしたり、未来の空間について考えたりするためには、過去を理解しなければならないと父はいつも言っていました。だから、無意識のうちに美術史を勉強していたのだと思います。この業界で育った私は、ファッションがいかに美の理想にとらわれているかを強く意識しており、古今東西の芸術家にとって、美とは何なのかを理解したかったのです。だから美術史を勉強することは、自分がこれから入る世界に対しての審美眼を磨く事に直結すると、心のどこかで思っていたのだと思います。

左:シングルブレストブレザー、右:ダブルブレストブレザー(日本未入荷)

ブランドとしてのケイスリー ヘイフォードに、どのようなビジョンを持っていたのですか?

最初に始めたときは、イギリスのサルトリアリズムと英国のアナーキーという、この2つの考え方にとても重きを置いていました。特にロンドンの多くの人と繋がりのある二重意識というアイディアにずっと興味を持っていました。2つの場所から来たということ、自分のアイデンティティが1つの空間や環境によって定義されないということ、そしてそれが自分をどのように形成しているかということです。だからこのブランドでも、同じようなメッセージを伝えようと思いました。ひとつのアイディアではなく、調和がとれていない2つの世界を並置すること、それを私たちは「harmonious discord調和的不和」と呼んでいました。英国には素晴らしい伝統があり、反体制的に発展してきた素晴らしいサブカルチャーがあるので、これはとてもイギリス的なことです。私たちは常にこの事を意識し、ブランドのDNAを構築するための言語として使ってきました。

それは一貫して変わらないのでしょうか?

そうですね。2019年初頭に父が亡くなった時、ランウェイショーをやめたのですが、そのことがブランドのアウトプットやこの先どう進んでいきたいかにかなり大きな影響を与えたと思います。モダンテーラリングの側面が前面に出てきたのは、ちょうど父が病気になった頃でした。二重性という側面に依然として関心がありますが、それをどのようにモダンテーラリングに落とし込んでいくかということに今は関心があります。

ここで、今回のサンスペルとのコラボレーションの話をさせてください。ブランドについてはご存知でしたか?

サンスペルはとても親しみがあり、尊敬しているブランドです。私たちはロンドン、チルターン・ストリートに小さなショップがあるのですが、偶然にもサンスペルの数軒先で、毎日サンスペルチーム全員と顔を合わせています。だから今回のコラボレーションは、とても自然なプロセスだったのです。私がサンスペルブランドに対して抱いている尊敬の念は、その誠実さと、それがブランドから発信されるあらゆる事柄にどのように反映されているかという点にあると思います。私たちも同じような思いで進化を続けているので、同じ志を持つブランド同士ということでとても釣り合っているように感じられました。


ダブルブレストブレザー(日本未入荷)、プリーツトラウザーズ


プリーツトラウザーズ(日本未入荷)

今回のサンスペルとケイスリー ヘイフォードとの商品については?

コレクションを作ると言うよりは、課題を解決したいという思いが強かったと思います。実際には2種類のスーツとなる4型しかないのですが、上下を組み替えて着ることができるのです。家でリラックスして着ることができて、かつ打ち合わせに出かけても着替える必要がなく、夕方にドレスアップして出かけるときも同じ服が着られる、そんな服を私は作りたかったのです。そこで、私たちはお互いの強みを生かし、ジャージー素材のスーツを作りました。トラックスーツのような着心地で、どんな機会にも着る事が出来ます。アイディアを形にするのに時間はかかりが、見た目はごくシンプルに、でもドレープやカッティングに工夫がこなされた特別なコレクションに仕上がりました。「とても控えめである」おそらく両ブランドに共通する単語だと思います。

左:プリーツトラウザーズ(日本未入荷)、右:シングルブレストブレザーバックストレッチトラウザーズクラシックTシャツ

フルスーツとしても、または上下別々でも購入できるということでしょうか?

そうですね、汎用性のあるデザインにしようと思いました。私はこれまで、誰かに着こなしを指図したり、全身私たちのブランドを着なければならないと求めたことは一度もありません。私たちのお客様やオーダーメイドのクライアントは、常に自分に自信を持っていて、ブランドによって自分のアイデンティティを高め、ブランドを身に着けている事を主張する必要がない人たちばかりなのです。ブランドを押し付けることは、私たちが目指してきたものではありませんし、サンスペルが目指しているものでもないと思います。そういう事を超えて、いかに日常生活に溶け込ませるか、他者にどう見えるかではなく、自分自身を向上させる事ができるかが重要なのです。

このコラボレーションは、私たちがこの数年経験してきたことから生まれたのでしょうか?

テーラリングの世界では、従来の市場で大きな変化を迎えています。つまり、ロンドンの金融街“シティ”で働いていた毎日スーツを着るような人たちが、もうスーツを着る必要がなくなっているのです。先ほど、サブカルチャーやアンチエスタブリッシュメントの話をしましたが、人々は体制側の象徴をステイトメントとして利用します。今のスーツは、これからの世代に反体制的なステイトメントとして使われているような気がします。伝統的なスーツが苦境に立たされている今、テーラリングの世界には新しい生命が吹き込まれ、とてもエキサイティングな瞬間になっていると思います。伝統的なスーツはこれからも存在すると思いますが、これからの世代によって新しい命が吹き込まれ、彼らはそれを楽しんでいるのです。スーツには象徴的な意味が込められていて、多くの人がそれを嫌ったり、全く興味を持たなかったと思いますが、その障壁が取り除かれた今、このような大きな変化が起こり、イメージを変えていくのです。


左:ダブルブレストトラウザーズ(日本未入荷)、バックストレッチトラウザーズ、右:シングルブレストブレザー、プリーツトラウザーズ(日本未入荷)


これらの 「アン・ストラクチャー」なアイテムのお気に入りの着こなし方を教えてください。

私は結婚式やイベントの時以外は、ほとんどシャツを着ませんので、今回のアイテムはTシャツと一緒に着ることを想定してデザインされています。シャツとネクタイでドレスアップすることもできますが、Tシャツや薄手のクルーネックのニットを下に着るのが一番快適だと思います。そうすることで、肩肘張らないリラックス感が生まれます。最終的には、Tシャツとスニーカーに合わせるというカジュアルなスタイルも作れて、さらにフォーマルなシャツと靴でも簡単に着られるようにしたかったのです。

お気に入りの一枚は?

ワイドトラウザーズでしょうか。テーパードが効いていて、とてもいい感じで仕上がっています。無理なく、それでいて存在感があり、着心地もいいので、両方のいいとこ取りが出来ていると思います。トラックスーツを着ているような感覚であり、とてもエレガントにも見える、この2つを同時に実現できるのは、多くの人にとって理想的だと思います。

左:ダブルブレストブレザー(日本未入荷)、右:シングルブレストブレザー

これまでのキャリアで学んだ最も重要なことは何ですか?

「私たちの道から外れるな」という父の言葉が今でも耳に残っています。特にこの5年から10年の間に、ソーシャルメディアは非常に大きなノイズとなりました。ソーシャルメディアが発達し、ファッションブランドは大きく成長し有名になったり、または小さくなり忘れられたりしています。デザイナーとしてスタジオで仕事をしていると、そうした雑音に気を取られて、ブランドの本意からずれてしまいがちです。できるだけ実直でいること、短期的なことよりも長期的なことを考えることを私たちは心がけてきました。最終的にはファミリービジネスであり、レガシーを引き継ぐためにバトンが渡されたように感じるので、それを次の世代に引き継いでいきたいと思っています。だからノイズを遮断して、どうすればレガシーを引き継ぐことができるかを懸命に考えています。

casely-hayford.com

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