マテリアルマニュアル

2021年5月28日

伝統的な天然素材から⽇進⽉歩の化学繊維まで、
私たちの⾝の回りにはたくさんの種類の「素材」が存在します。
「⾐服」としてそれらをみるとき、作り⼿はどのように素材と向き合い、デザインしているかについて、
ウェブメディアAnglobal Community Martの、素材にフォーカスしたコーナーから取材を受けました。

―2021年春夏シーズンのSUNSPELを「マテリアル」という視点からひも解いていきたいのですが、その傾向について教えていただけますか。

基本的にSUNSPELはシーズンごとに素材使いが変化するというよりも、カラーでリフレッシュさせていくという感じですね。最近はすこしずつリネンも増えてきましたが、柔らかくて肌触りがいい。あくまでもそういう上質なコットンがベースです。

カラーでいうと、今シーズンはイギリスのブランドらしい、少しスモーキーな感じというか、グレイッシュでニュアンスがある⾊使いが特徴かな。春夏なのでもちろん明るい⾊もあるのですが、全体としてはちょっと落ち着いた⾊味ですね。加えてここ数シーズンの春夏ではペールトーンも採⽤されるようになってきました。

そういったシーズンを象徴するようなカラーは主にジャージー(Q82)リビエラメッシュ(Q75)ピケ(Q30)の3つの種類の素材で表現されることが多いです。それらはすべてインポートの素材なんですが、頭に付いている「Q」は「Quality」のことで、SUNSPELの素材へのプライドを感じさせてくれますよね。

―⽇本で作られる素材もあるのでしょうか。

いくつかありますよ。SUNSPELの場合、インポート素材は基本的に繊維が細くてとてもなめらかなんですが、⼀枚で着るとすこし透けちゃうんですよね。ホワイトは特に。⽇本では欧⽶に⽐べて透けることを気にする⽅が多いので、薄いけど密度が⾼くて透けにくい「ヘヴィアーコットン(HEAVIER COTTON)」という素材を作りました。多様なマーケットニーズに合わせるために、インポートの素材で「無い」ところを補っている感じで す。

―カラーはホワイトのみ?

「透けないホワイト」という明確な⽬的で作ったので1⾊です。始まりは「こういうのがあったらいいな」というショップのスタッフからのリクエストがきっかけで、2020年春夏シーズンに男⼥1型ずつ作って試してみました。それがとても好評で、今シーズンはビックシルエットにしてもう1型ずつ増やして展開することに。でも⾊は増やしていません。あくまでも「透けないホワイト」の勝負です。

―ほかのSUNSPELの⽣地と⽐べると少し⾁厚な感じがします。

⽷の太さと編み⽅を調整しながら、⽣地を厚くして透けにくくしているんです。実はこのヘヴィアーコットンはインドの超⻑綿の100番⼿という、SUNSPELの中でももっとも細い⽷を使っています。なぜそんな細い⽷で透けない厚みが出せるのか、詳しいことは内緒ですけど、そういう⼯夫がこの仕事をしていておもしろいところですね。

綺麗な表⾯を保ちつつ、隙間を詰めて編まれているHEAVIER COTTON

―そういった⽣地作りはどのように進めるのでしょう。

⽣地屋さんや紡績⼯場やニッターさんにリクエストを出して似たようなサンプルを探してもらったり、試作を作って送ってもらったりすることもありますが、だいたいは現場に⾏って職⼈さんと⼀緒に話し合って考えます。「⽅向性はいいと思うんですが、硬さが気になるのでもう少し度⽬を緩めてみてもらえますか」という感じで調整を繰り返して理想に近づけていきます。

―職⼈さんとのコミュニケーションも⼤切なんですね。作りたい⽣地があってもそれを作れる⼈と場所がなけれ ばいけない。

そうですね。だいたいのものはイギリスやヨーロッパの⼯場でも作れると思いますが、あとは需要があるかどうかですね。SUNSPELってクリーンでファインな素材が圧倒的に多いので、特にヨーロッパではホワイトのTシャツは1枚で着るというよりもインナーとして⽤いられるんです。そのためこのヘヴィアーコットンみたいに透けない⾁厚感を追求した⽅向性の素材はあまり⾒かけません。着⽅によってマーケットから求められているものの違いはあると思います。

―グローバルブランドならではですね。海外進出を果たした⽇本企画の素材というのはあるのでしょうか。

「ループウィールド・ループバック(=吊り裏⽑)」という素材は⽇本企画が海を渡った最近の例です。SUNSPELではいま3種類のループバック(=裏⽑)があるんですよ。

―⽇本ではスウェットと呼ばれる素材ですね。なぜ3種類も?

もともとSUNSPELで使⽤していたポルトガル製のものと、⽇本企画として加わったものが2つで計3種類。触ってみないとちょっとわかりにくいかもしれませんが、簡単に⾔うとフワッとしているか、ツルっとしているかの違いです。使う⽷と編み⽅の組み合わせの塩梅で、同じループバックでも全然違った表情になるんですよ。ちょっとサンプルを並べてみますね。

右 ポルトガル製:単⽷ループバック(=裏⽑)
中央 ⽇本製:単⽷ループウィールド・ループバック(=吊り裏⽑)
左 ⽇本製:双⽷ループバック(=裏⽑)

右 ポルトガル製:単⽷ループバック(=裏⽑)
中央 ⽇本製:単⽷ループウィールド・ループバック(=吊り裏⽑)
左 ⽇本製:双⽷ループバック(=裏⽑)

―グレーのループバックが3つ並びました。

1つめ(写真右)はもともとSUNSPELにあったポルトガル製のループバック。先シーズンにイギリス⼈アーティストのDavid Shrigleyとのコラボレーションで使⽤したループバックがこのタイプですね。表が微起⽑加⼯されていてフリースみたいにふわふわしていてすごく柔らかい。2つめ(写真中央)は今シーズンSOPHNET.とのコラボレーションで使われているループウィールド・ループバック(=吊り裏⽑)。旧式の吊り編み機でゆっくり編んでいくので空気を含んで網⽬の密度も緩くてふんわりしているのが特徴です。ポルトガル製よりもさらにオーセンティックでヴィンテージっぽい雰囲気ですね。そして3つめ(写真左)も⽇本製で、表が起⽑されていなくてツルっとクリーンでなめらかです。

―触ると全然違います。編み⽅はどれも⼀緒なのですか。

基本的には⼀緒です。⽷には単⽷と双⽷とがあって、紡績されたままの1本の⽷、つまり単⽷はねじれていたり太さにむらがあったりするので、ラフでカジュアルなデザインに向いています。⼀⽅その単⽷を2本撚り合わせたのが双⽷で、太さがより均⼀になってツルっとなめらかになります。

そのことを頭に覚えておいてもう⼀度3つのループバックを⾒てみると、ポルトガル製と⽇本の吊り裏⽑の⽅は表に単⽷が使われていて、デニムやチノとよく合うオーセンティックでカジュアルな表情をしています。でも私はそれらとは違った⾒え⽅の、フランネルのきれいなトラウザーズにも合わせやすい⼤⼈っぽいループバックというところを⽬指して3つめの双⽷のバージョンを作りました。結果、ちょっとずつ違うループバックが3種類できたわけです。

―それも「無い」ところを補うイメージですね。

その通り。こういうのも “SUNSPELらしい”と思って作りました。クリーンでファインな素材が多いブランドなので、⽅向性を合わせたループバックも必要だろうと。突⾶なデザインができない分、こだわるところはとことん素材になるんですよね。

ーそういう微差の豊かさが⻑く愛され続けている魅⼒でもある気がします。

サンスペルを愛⽤してくださるお客様はきっと、ジャージー、アンダーウェアの⼼地よさを気に⼊って⽇常的に使⽤してくださる⽅が多いと思うので、ショップに⾏けばそれに応えられるようにウェアのバリエーションを揃えておきたいなって思うんです。

―⾒た⽬ではほとんどわかりませんが、触れるとその違いの⼤きさに驚きました。今⽇はありがとうございまし た。

こちらこそ、ではまた。