Stylist Shibutsu Interview

サンスペルとスタイリスト私物

2022年7月19日

サンスペルと〈スタイリスト私物〉のコラボレーションは、今回で4度目。
ロングイートンにある生産工場に足を運ぶなど、
ブランドと継続的な関係を築いてきた。
ボクサーショーツの特徴をはじめ、
上質な「普段着」の条件、サンスペルの意外な側面、
そして、普段あまり語られることのない、ものづくりの流儀に触れる11の質問。

1コの質問」

1. 今回のボクサーショーツの特徴を教えてください。

ボディと同じ生地でウエストゴムを包み込んだ「共地」の仕様は、直ゴムより肌に跡がつきにくく、感触もよい。白いゴムの黄ばみが目立つこともない。着丈は長め。ごみ捨てぐらいなら外に出られて、パンイチでも様になる。

2. 最初のコラボレーションも、ボクサーショーツでしたね。

2018年のベンガルストライプですね。ピッチが良くて清潔感があり、表にロゴがない。20年程前にセレクトショップで買って、とても気に入っていたものを復刻してもらいました。

3. 今回はカーボンブラックとトマトレッドの2色。それぞれの色の印象や、役割の違いはなんですか?

黒は万能。赤は、力をあやかれる色。

4. いい下着の条件とは?

自分以上にニュートラルでいてくれる。誇張がなく、履いていることを忘れる。そして、見えても恥ずかしくないもの。

5. スタイリスト私物のアイテムを作る過程で、こだわっていることを聞きたいです。

自分で使って洗って使って洗ってを相当に繰り返して、バランスを調整する。ソファに置いてあるときや、脱いで銭湯のカゴに投げ入れたときの佇まいも含めて日常に溶け込むかを見る。スタイリスト私物はどれもそういう作り方をしています。

今回のボクサーショーツは、大きな修正はなかったけれど、使い込むことに時間をかけたので、発売まで1年近くかかりました。

6. 生活に馴染むことを重要視しているんですか。

そうですね。見た目の特別さは要らないと思っています。むしろ、極めて普通であって欲しい。サンスペルの服も着れば分かる特別な着心地なのに、見た目はいたって普通で、出しゃばらないところが共通していると思います。

7. サンスペルならでのものづくりを一言で表すなら?

品(ひん)と品(しな)がよい。

8. ブランドの本拠地であるイギリスや、この国で生まれるプロダクトに対してのイメージは?

真面目ゆえの……。

9. コラボレーションをはじめた当初、サンスペルを知るために何かしたことはありますか?

どんなところで作っているのかを見たくて、イギリスのロングイートンにある工場に行きました。社長のニックや工場長のジョン、そこで働く人たちの堅実さと人間臭さの塩梅が、なんともたまらなかったですね。縫製や裁断を担当する職人のブースに家族の写真や好きなスターの写真が貼ってあったり、名前が書かれた扇風機が置かれていたり。

工場の休憩所では、髪を固めたおばさんにハスキーボイスで煙草を勧められて。煙草の封を切って最初の1本を取り出すまでの一連の所作や、ニカッと笑う表情はもう最高。自分は吸わないから「I don’t smoke.」と笑って、真面目な日本人をするしかなかったんですけどね。

10. ロングイートンの工場の周りや、イギリスで見た印象的な風景やエピソードをもうすこし聞かせてください。

長い煉瓦の壁。列車の窓から見えた、線路沿いに並んだ住宅と、その裏庭に干された洗濯物。ハイスクールの学生たちの放課後。人によってはパツパツだったり、大き過ぎるシャツに、イギリスらしいチェックのパンツやスカート。足元はそれぞれ違うスニーカー。彼らは、自分たちがお洒落かなんて気にしていないようだけれど、とても格好がいい。イギリス郊外で出会ったノンフィクションにはやられましたね。

11. 最後の質問です。今は、生産背景にこだわった上質な素材や、長く使うことができる実用性、あるいは環境への配慮など、物の善し悪しを判断する尺度はさまざまですよね。あらためて、スタイリスト私物が考える「ものの良さ」とはなんでしょうか。

編集者をしていた頃、何をもって「本物」とするのか、よく議論をしました。歴史なのか、売上なのか。他にもいろいろありますよね。でも、長くやっているメーカーでも新しいブランドでも、一生懸命なところは、たいてい品質はいい。だから、作り手側の歴史や売上をあれこれと比べて、そのプロダクトが本物かどうか云々の判断をするのは、野暮というか、できっこないと思っています。

ただ、それが、持っている人の生活に馴染んで、本当に使いこなされていれば、180円のボールペンでも1億8千万円の車でも「本物」になるんだと思う。「仕事でメモをはやく取るためのシャーペンがあって、芯は決まって柔らかめの2B。間違えたら消すから反対側に大きめの消しゴムがついているとこも気に入っている」という話があったとする。これって、最初から最後まで「本人の物」のことですよね。人の生活と物が馴染み合って、誰かの毎日に必要とされてこそ、物は本物になり「私物」になるのだと思います。

スタイリスト私物
スタイリストの山本康一郎が、自ら愛用するブランドやメーカー、アーティストと協業をして展開するレーベル。
@stylistshibutsu

山本康一郎
1961年京都生まれ、東京育ち。大学時代からフリーエディターとして活動をはじめ、雑誌や広告、CMなどメンズスタイリングを手がけるほか、ブランドのディレクションにも携わる。2016年、2018年にはクリエイティブディレクターとして2度のADC賞を受賞。

Photography|Mitsuo Okamoto(model), Satoshi Yamaguchi(still)
Text | Yoshikatsu Yamato (kontakt)