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ロングイートン

2016年8月26日

サンスペルの商品が世界中のさまざまな店で扱ってもらえるようになった今も、その源となるのは、イングランド中部を流れるトレント川の北、ノッティンガムの南西11kmに位置する町の素朴な工場です。この町と工場こそ、私たちが「ロングイートン」と呼んでいる場所です。

今日、サンスペルの本社はカナル通りのキャヴェンディッシュ・ハウスにあります。遡ること1937年、 サンスペルの前身となる会社が移転してきた当時この町は英国レース産業の中心でした。今でもこの地区には19世紀末から20世紀初頭にかけての工業建築を代表する建物が残っています。その中のハリントン・ミルは最大のレース工場のひとつで、長さ167メートルの母屋は125万ピースの煉瓦を積み上げたものです。1907年ごろこの工場には1400機のレース編み機があり、全町民の4分の1にあたる4000人が雇用されていました。

サンスペルはロングイートンに生産の拠点を構えると間もなくそのパイオニア精神を発揮することとなります。第2時世界大戦が勃発した時には、伝統的なレース編み機を使った独自の軽量セルラー素材Q14を開発していました。そしてトーマス=アーチボールド=モンゴメリ・ヒルは、この工場移転をきっかけに社名をそれまでのシーアイランド・テキスタイルLtd.から現在のサンスペルに変更します。ちょうどその頃、それまでシーアイランドコットンのみで生産されていたメンズアンダーウェアの素材がなめらかで軽くコンパクトなQ14に取って代わられようとしていたのです。

そして常にロングイートンを中心にサンスペルは独自の「継続」と「変化」を生きてきました。「継続」とは、完璧なクォリティーと今日に引き継がれるクラフツマンシップへの息の長いこだわりを、「変化」とは革新を迫られたという点で、動乱の時代となった第2時世界大戦、そしてそれに続く緊迫した冷戦を意味します。というのもサンスペルは戦時下の英国で医療機関や軍に制服と肌着を提供し、その後も1950年代に英国空軍と契約を結ぶことになったからです。

このような20世紀半ばの厳粛な空気とは別に、ロングイートンでは快適な新素材の開発のため誰もががむしゃらに働いていました。フランスやイタリアの地中海沿岸への旅行のためにより軽い素材でポロシャツを作りたいと思い立ち、縦編み素材のQ75を生み出したのはピーター・ヒルです。

現在、すべてのサンスペルの製品がロングイートンで生産されているわけではありません。しかしこの場所で手作業によって作られる製品こそサンスペルの真髄であり、長く培われた伝統的技術と21世紀の最新技術、その双方と常に向き合っているのです。