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SUNSPEL COMES TO NEW YORK

2018年9月14日

アメリカでの初のショップオープンの機会に、US版エスクァイアのファッションディレクター、ニック・サリヴァンにマンハッタンのソーホー地区について話を聞きました。

ローリングストーンズの1977年のアルバム『ブリッジズ・トゥ・バビロン』に収められた曲「Anybody Seen My Baby」にこんな歌詞があります:And I was flippin’ magazines / In that place on Mercer Street / When I thought I spotted her。
プロモーションビデオに起用されたアンジェリーナ・ジョリーがマンハッタンをさすらう姿が印象的なこの曲に登場するソーホー地区。 そのもっとも有名な通りのひとつにサンスペルの新しいショップがオープンします。

マーサー・ストリート店はサンスペルにとって初めてのアメリカ出店です。サンスペルのオンラインショッピングの顧客層や、サンスペルのコレクションをより素敵に見せてくれるこのエリアのリラックスしたフィーリングが決め手でした。

このエリアの呼び名ソーホーSoHoは、ハウストン通りの南(South of Houston Street)であることに由来しています。 大理石や花崗岩よりも安価な建材だったキャスト・アイアン建築群のファサードが特徴的で、長年マンハッタンのボヘミアンカルチャーの中心でした。 建築の特性上、光が差し込む大きなロフトが多く、アトリエと居住空間の両方が確保しやすいことに加えて家賃も安かったので1960年代の終わりから アーティストたちの拠り所となっていました。そして、近年はおしゃれなショップやバー、レストランやホテルが立ち並ぶエリアになっています。

ニック・サリヴァンは14年前にロンドンからニューヨークに渡りUS版エスクァイアのファッションディレクターになった人物です。 ブルックリンに住み、マンハッタンのハースト・タワーで仕事をしています。外国から移り住みローカルになった住人としてのソーホーガイドをお願いしてみました。

- 2004年に大西洋を横切ってニューヨークに来た時、このエリアの第一印象はどうでしたか?

その時にはすでにデザイナーのショップが並んでいて、昔のソーホーの面影は遠い彼方でした。 コヴェントガーデンのニューヨーク版、といった感じです。そういう風に変化していたのです。

- でもかつてのボヘミアニズムの魔法はまだ消えていないのでは?

火が消えてしまったあとも煙の匂いがするように、かすかに残ってはいますね。 ボヘミア的なエリアというのは、移ろいやすいものなのです。世界中の多くの場所がそうです。 パリのモンマルトル、ベルリンのクロイツベルグ、ロンドンのホクストン… 安い家賃と言えばアーティストとミュージシャン、アーティストとミュージシャンと言えばステージ、ステージと言えばバー、レストラン、そしてショップ、という訳です。 外から来た人たちにはまだそういった昔ながらのニューヨークの良さが感じられるかも知れませんが、 1970年代の破産寸前だったニューヨークを知っている地元の人たちにとっては全くの別物です。

- ジュリアン・シュナーベル、ジャン=ミシェル・バスキア、そしてもちろんアンディ・ウォーホル…その頃のソーホーはアーティストやクリエーター達の天国でした。 こういった顔ぶれがこのエリアとってどれくらい重要だったのですか?

彼らはなくてはならない存在でした。一時的とは言えこの地区の破壊を食い止めたのは彼らです。 彼らが魅力を高めてくれたおかげでソーホーは生き残り、そこにファッションブランドが店を構え始め、この地区の価値は上がりました。 その間も、彼らはソーホーらしさを守り抜きました。でなければ、ソーホーはニューヨークのほかの高級なエリアと似たり寄ったりの場所になっていたでしょう。 ソーホーならではのキャスト・アイアン建築の倉庫も無くなっていたでしょう。 「ソーホー・キャストアイアン歴史地区」というのはもちろん、建築物のファサードにちなんで名付けられたものです。 そしてこれはソーホーをうまく言い当てています。というのも、ソーホーは一種のファサードなのです。 例えるなら、見た目は強烈なパンクを装っているおしゃれなファッションモデル、という感じでしょうか。 とは言え、いつも騒がしくて、時としてシック、そんなニューヨークの縮図としてのソーホーが好きです。

- あなたがニューヨークに暮らし始めてからもソーホーは常に変わってきたでしょう。振り返ってどう思いますか?

同じだとも言えるし、全く違うとも言えます。ただ8月になると匂いますね 。 でもそれはソーホーに限ったことではなくニューヨーク全体が8月になると匂います。 暑さのせいでしょうか…。

- どんな点でソーホーがニューヨークのほかの地区よりも抜きん出ていると思いますか?

活気があります。でも通りによりますね。ブロードウェイとウエスト・ブロードウェイはツーリスト向けです。 グリーン・ストリート、マーサー・ストリート、プリンス・ストリート、そしてスプリング・ストリートは場所によって面白いものがあります。 ブロードウェイから離れれば離れるほど、素敵な場所があると思っていいと思います。 ブロードウェイの東側だと、リトル・イタリー、マルベリー・ストリート、エリザベス・ストリート、そしてもしこれもソーホーに入るのならバワリー、 この辺りはまだ勢いがあります。

- お気に入りのバーはありますか?

プリンス・ストリート94番地の「Fanelli Cafe」が好きです。 というのも、あまりに昔ながらの店なので混雑に煩わされることがないのです。 でも、ソーホーらしいガッツを感じるグランド・ストリート59番地の「Lucky Strike」もお気に入りです。 ここなら人混みにもまれても平気です。

- お気に入りのレストランは?

マーサー・ストリート142番地の「Lure」、そしてウエスト・ブロードウェイ376番地の「Cipriani Downtown」が好きです。 それと、ボンド・ストリート47番地の「Il Buco」…値段は高めですが、とても美味しいですよ。 朝食やランチならマーサー・ストリート147番地の「Mercer Hotel」も好きです。 ファッション関係者が集まる場所です。ここでエディ・スリマンをインタビューしたこともあります。 1ヶ月前に企業家のマット・ジェーコブソンと朝食をとったのもここでした。 マッシモ・ピオンボに偶然会ったこともあるし、ジャン=ポール・ゴルティエを一角に、もう一角のテーブルにドウツェン・クロースを見かけたこともあります。 本当ですよ。まるで1990年代にタイムスリップしたみたいでした。 ミーティングのためにクロスビー・ストリート79番地の「Crosby Street Hotel」に行くこともよくあります。 ランチによく行くのは、ラファイエット・ストリート265番地の「Sant Ambroeus」です。 写真家たちが吸い込まれるように通うこのレストランのアリレザは素晴らしい支配人です。 ほかにはトンプソン・ストリートの西側に美味しい日本食のレストランがいくつかあります。

- 最後に、ソーホーをそぞろ歩くのに一番のBGMは?

答えは簡単、ルー・リードです。