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N.HOOLYWOOD
An Interview with Daisuke Obana

〈N.ハリウッド〉とのコラボレーションによって、Tシャツ2型(各3色)がリリースされました。今回が初となるコラボレーションのことから、2月頭にニューヨークで発表されたばかりの最新コレクションのことまで、デザイナー・尾花大輔さんの言葉を届けます。

2020年3月7日

尾花大輔 〈N.ハリウッド〉デザイナー
点と点がつながって、何かが生まれる。

Photography :  Koki Sato
Interview & Text :  Yasuyuki Takase (EATer)
Design :  Ren Murata (Brown:Design)

〈N.ハリウッド〉の2020 SPRINGコレクションは、尾花大輔さんがロンドンやエジンバラへの旅で得たインスピレーションが服づくりの起点となった。英国のトラディショナルなウエアをベースとしながら、それはどこか力が抜けていて、自由気ままに着る楽しさを伝えてくれるようでもある。そのコレクションにおいて、〈サンスペル〉とのコラボレーションによるTシャツが誕生した。

――「このコレクションでは、自分の目で見た英国というものを、言ってみればツーリスト的な感覚で、さらっと表層的なものとして発信してみたいと思いました。僕自身はもっぱら、アメリカについて深く掘り下げることを続けてきただけに、英国に詳しい人たちにはとてもかなわないし、過去のものを忠実に再現するだけでは、コスプレの服になってしまうこともわかっていた。そうであるならば、保守的なことに抗う、トラディショナルなものを壊す、といった英国のもうひとつの文化を、自分たちのアプローチとして取り入れてみようと考えました。音楽やさまざまなカルチャーが、英国からアメリカにもたらされた歴史がありますよね。それに通じるように、アメリカに入ってきたパンクのようなイメージで、あくまでライトに、現代的に表現できたらいいなと。ジョニオさん(〈アンダーカバー〉デザイナー・高橋盾)にも協力していただいて、アーカイブからチェック柄のテキスタイルを提供してもらっています。今回のコラボレーションに関しても、〈サンスペル〉のまさしくクラシックなつくりを、そのベースは生かしつつも、どう崩すべきかというところを考えました」

発表されたTシャツは、ショートスリーブとロングスリーブの2型。各所のふちを切りっぱなしにし、ポケットなどの縫い代を見せながら、ゆったりとしたオーバーサイズに仕上げられている。その面を裏返すと、そうしたディテールのないシンプルなTシャツとして着ることができるリバーシブル仕様。両ブランドを併記した織りネームも両面にあしらわれ、ひとつのアクセントになっている。この特集ページ内で尾花さんが着用しているのは、ロングスリーブ・タイプだ。

――「Tシャツをひっくり返して着ているような、どこか反抗心がうかがえる雰囲気にしたいと思いました。こうした組成の生地を切りっぱなしにすると、クルクルと丸まってしまうのですが、あえてそのままに。細かなところですが、ネックにはボディと同じ生地を使い、縫い付け方などを変えて、ちょっとしたねじれをつくっています。このように、今回はデザイン的にある程度変えたかったので、〈サンスペル〉の従来の生地を使わせてもらいました。逆に、デザインをそれほど変えない場合には生地から変えてみるなど、コラボレーションをする際には、バランスを考えながら進めていきます。方法はさまざまなのですが、僕は、互いのブランドらしさが必ず残るようにしたい。このTシャツも、もう一方の面は、対照的に、まったくシンプルなTシャツとして着ることができます」

ルーズなシルエットでも、品がいい。

〈N.ハリウッド〉のこのコレクションでは、ほかの英国ブランドやメーカーともコラボレーションを行っている。それも、尾花さん自身がこれまでに着てきたもの、使ってきたものを基本として、個人的に愛着のある相手ばかりであるという。〈サンスペル〉に関しては、数年前から、コットンジャージー素材のタンクトップやボクサーショーツを着用しているそうだ。

――「職業柄、いろんなブランドのアンダーウエアを買って、実際に着てみて、洗濯も繰り返しているのですが、クローゼットにいま残っているのは、昔から愛用している〈カルバン・クライン〉と、自分たちでつくっている〈N.ハリウッド アンダーウエア〉、それに〈サンスペル〉くらい。とくにショーツは、体の中でもデリケートな部分にあたるだけに、相性がすごく重要ですよね。〈サンスペル〉は肌あたりの気持ちいい繊細な生地を使っているのに、へたりにくいところもいい。もちろん、上質なアンダーウエアのメーカーとして、創業から160年もの歴史があるということも、大きな意味がありました」

〈サンスペル〉ならではの生地とともに、長きにわたってクオリティを支え続けるロング・イートンの工場の生産ラインを使うことによって、このTシャツは生まれた。尾花さんにとっては、どのような発見があっただろうか。

――「これまでの〈サンスペル〉のアーカイブからすると異色だろうと思うのですが、このTシャツは、かなりルーズなシルエットに仕上げています。たとえば、これを米綿の厚手の生地でつくったりすると、ハリが出すぎて、ストリート感が強くなってしまう。でも、これだけなめらかな生地を使って、細い糸できれいに縫製されていると、品のよさが残りますね。それに、こういう生地量の多い服が、体に触れ続けているのって、気持ちがいいんですよ。工場側にも、こちらのやりたいことを、しっかり理解してもらうことができて。長い歴史の中でも、前例のないつくりだったはずですが、最初のサンプルから、完成イメージに近いものを上げていただきました」

旅から離れて、可能性がまた開けた。

このインタビューが行われたのは、2月の中旬。尾花さんは2週間ほど前に、ニューヨークで2020 FALLコレクションの発表を終えたばかりだった。ブランド初の試みとして、さらにコンテンポラリーに進化させたフォーマルライン〈N.ハリウッド コンパイル〉を、ショー形式で発表したのである。この特集ページに掲載している写真は、まさにその直前に、ニューヨークのアトリエで特別に撮影していただいたものだ。

――「新しいコレクションをつくり始める前に、いつもは、そのテーマを確かめる旅に出ているのですが、昨年はニューヨークの春夏コレクションの発表時期が1カ月も前倒しされたこともあって、タイミングを逃してしまったんです。インターネットでリサーチできることもあるけれど、やっぱり自分は、旅に出て実際に見たもの、経験したことがないと、まるでイメージが膨らまないということがわかって、もう愕然として(笑)。ただ、『ミスターハリウッド』として店舗を構えたのが2000年12月だから、今年で20年が経つし、ニューヨークで発表し始めてからも10年目になるタイミングでもあった。そこで、そろそろ違うことをやってもいいのかなと、ポジティブに切り替えられました。しかも、コンパイル・ラインは、先シーズンからスタイルをかなり変えていて。肩の力を抜いて、いつでもどこにでも着ていけるような、よりコンテンポラリーなフォーマルの在り方を追求し始めたところだったので、いい機会でした。なにより、こうして少ないピースで、シンプルな服だけでショーができたということは、自分にとって、とても大きい。これから先は、もっと違うやり方も選んでいけると思います」

その最新のショーは、King Gnuの常田大希さんによるチェロの演奏で幕を開ける。鬼気迫る演奏と服の世界観が、次第に渾然一体となっていくさまに、胸が揺さぶられるようだ。

――「もともと大希とは飲み仲間のような間柄で、彼が5歳の頃からチェロを習っていたことを聞いていました。次のショーでは歴史のある場所でコンテンポラリーなことをやってみたいのだけれど、なにか一緒にできないだろうかと話してみたところ、彼にもアイデアがあると。トラックとなる音源をつくって、そこに生演奏を重ねるという方法を提案してくれました。先ほど話したように、今回は旅から得たインスピレーションはなかったのですが、僕にとっては、一気に点と点がつながったような感じです。そうしたいろいろなことが重なって、このコレクションが特別なものと伝わりがちなのですが、自分の実感としては、たまたま結果的にこうなった、というところで(笑)。まだまだこれからも、さまざまなチャレンジや実験を繰り返しながら、続けていくわけですからね」


*〈N.ハリウッド〉×〈サンスペル〉のTシャツは、サンスペルの直営店公式オンラインストア、N.ハリウッドの直営店でご購入いただけます

尾花大輔 Daisuke Obana
1974年、神奈川県生まれ。2000年12月にショップ「ミスターハリウッド」を原宿にオープンし、翌年にブランド〈N.ハリウッド〉をスタート。2002年より東京でコレクションを発表し続けたのち、2010年9月にニューヨークにて2011 SPRINGコレクションを発表。以降、ニューヨークで発表を続け、2020年2月には、ブランドとして初めてフォーマルライン「N.ハリウッド コンパイル」(2020 FALLコレクション)をショー形式で発表した。

Special thanks to Koichiro Yamamoto